導入事例
水力発電所の調速機や入口弁を操作する圧油は一般機械の作動油のように直接ポンプで油を送ってシリンダーを操作させるのではなく一旦空気で加圧したタンクに油を送り、定圧に維持してヘッド差から生じる水圧を受ける。空気で加圧するとヘンリーの法則で油の中に多量の空気が溶ける。この油が大気圧の油槽に戻ると気泡が出る。
圧油システムの油槽の油面近くの壁面にカーボンの黒いラインが付いていたり、作動不良が発生した制御弁摺動部には黒褐色あるいは茶褐色の粘着性物質(酸化変質物)が付着しているのが見られる。これは圧油の中の気泡が断熱圧縮によって高温になり、油の分子がせん断されてカーボン粒子が出来たり、油の酸化変質物が発生するからである。
この酸化変質物はフィルターでは除去できず、バルブ類の作動不良の原因になる。静電浄油機EDCは、このようなカーボンや酸化変質物を除去する。
水力発電所の巨大な水圧を受けた水車を支えて回転させるのがスラスト軸受である。この軸受けには流体潤滑膜が形成されているが、その膜の厚さは50ミクロン前後であるといわれている。
もし、この潤滑油膜の中に汚染物や水分が入ると潤滑は妨げられる。
水車は水の力で回転するので、水が潤滑油に入る可能性がある。水は錆を発生させたり油を酸化変質させるだけではなく、潤滑性が非常に悪い。スラスト軸受の潤滑油の油管理の第一は、水分の除去と潤滑膜に入り込んで磨耗を起こす汚染物を除去することである。水分の除去には除水フィルタDHが有効である。
DHフィルタエレメントは50ミクロン前後のろ孔をもった深層フィルタであり、ポンプの流速を遅くしてあるから水分を安定的に除去する。このエレメントが水を吸うと繊維は膨張し、フィルタの目は小さくなるので50ミクロン以下の汚染物でも除去できるようになる。
ポンプ流量を小さくしてあるので、油とフィルタの摩擦による静電気の発生は少ないだけでなく、フィルタエレメントは水分を吸収して湿っているので静電気は帯電しない。除水フィルタDHと静電浄油機を組み合わせたEDHはこの油管理に最適である。
いつもお世話になっているクリーンテックの佐々木徹です。
本日はKLEENTEK 「トライボトーク」第10号をお届けします。
前回の「トライボトーク9」の [Deer Lake]の項で、シカゴのNewfoundlandは間違いで、正しくはカナダのNewfoundland でした。お詫びして訂正させていただきます。
さて、日本はデフレスパイラルにはまり込んだようで、景気回復は平成17年にずれ込むと政府は発表しました。長期プライムレートが1.7%に低下しています。しかし多くの企業は2003年3月期に赤字決算を見込んでおり、2002年3月期に利益を出している企業のROA(固定資産利益率)も1.6%程度と低い状況にありました。このような状況下で、企業に設備投資を期待するのは無理で、現有機械設備を有効に使って利益を出すことが第一の急務です。それには「メンテナンス」が重要であり、合理的なメンテナンスを行うには「トライボロジー」が必要であることを私は主張してきました。
今年8月に300通の配信からスタートした「トライボトーク」は皆様のご支援によって、今号で配信先が700通を超えます。皆様のご支援に厚く御礼申し上げますとともに、皆様はよい新年をお迎えになることを祈念申し上げます。
[21世紀のメンテナンス:フラッシングをしない油交換は役に立たない理由:その2]
今回は、極性物質がどのようにして、金属表面に吸着するのかを考えて見ます。我々は油中の油の酸化変質物分子を直接見ることはできません。しかし油中の分子の動きと同じような現象を身近に見ることができますので、それらと対比しながら説明いたします。
[福田元総理 (manager)と小沢征爾氏 (opera)が一緒になったらイラク進撃]
熱烈な音楽フアンでもない私でさえ、元日の夜、TVでニューイヤーコンサートの番組をみると、世界が平和であることを感じます。今年は北朝鮮に拉致された人5人が帰国されましたが、この人たちの家族は人質に取られたままです。一日も早い全家族の帰国を祈っています。北朝鮮というと赤軍派が日航機を乗取ったことを思い出します。そのときの総理は福田さんでした。今回は福田さんと小沢征爾さんをくっ付けてみます。
いつもお世話になっているクリーンテックの佐々木徹です。
本日はKLEENTEK 「トライボトーク」第13号をお届けします。
何度も書きますが、筆者は船の修理屋上がりです。修理屋は機械を分解して修理すると儲かりますが、機械を止めて修理をすると、修理後の最初にトラブルが起こるのは修理した部分か、それに関連した部分であることを知っています。従って、機械を止めて行うメンテナンスは上策ではないのです。修理屋の経験から筆者は「21世紀のメンテナンス」を提唱してきました。その要諦は、機械を止めないで「油の分子に潤滑面をきれいにさせる」ことです。多くの人はそのようなことは出来ないと考えておられましたが、筆者を信じて長期間かけて調査をしてくださった人たちがおられます。最初は約10年前のGMサターン工場のミッキー・ジャクソン氏であり、今回はスエーデンのジョン・ショーベリー氏(成形工場の工場長)です。ショーベリー氏は静電浄油機をつける前のパイプの一部と静電浄油機の使用前後のパイプの一部とパイプの写真に経過説明を添えて送ってくださいました。
[21世紀のメンテナンス:静電浄油機で浄油した油は機器内部をきれいにする、その1]
1990年からフィルタを使っていた油圧プレスにバルブ・トラブルが多発していた。1997年に調べたらパイプ内にはスラッジが付着していたので、静電浄油機を取り付けた。そのとき油圧の振動を緩和するために高圧側のパイプを高圧ホースに換えた。静電浄油機で浄油したときのフラッシング効果を調べるため、切り取ったパイプを保存した。5年後の2002年に低圧側のパイプを取り外して調べたら、スラッジは全く付いておらず、静電浄油機の効果が確かめられた。パイプの写真を添えて経過を報告します。
[Piano]
イタリーでは各階のフロアーのことをpianoといいます。階のフロアーと楽器のピアノはどのような関係があるのか。今回はpianoの語源に遡って調べます。楽器のピアノの名前を、ドイツ語は機械的な原理を正確に説明した名称を採用していますが、イタリー語は楽器の表現力を名称にしています。両国の国民性が分かる命名です。
いつもお世話になっているクリーンテックの佐々木徹です。
本日はKLEENTEK 「トライボトーク」第12号をお届けします。
昨年末、アメリカ海軍の強襲艦 ESSEX を訪問し、上級将校の案内で船の隅々まで見せてもらいました。軍艦は戦争という極限の危機の中で仕事をするので、全ての作業は訓練でテキパキと処理されていました。油圧システムのフラッシングの現場では、一滴の油もこぼさず作業が行われ、大きなフラッシングユニットの片付けも、あっという間に終りました。戦闘時に破損したものを片付ける訓練の成果だったと思います。
機械を分解・修理すると、関連箇所に高い確率でトラブルが起こるので、機械を止めて修理するのは最後の手段です。機器の状況を克明に記録している船では、CBM(コンデイションベースのメンテナンス)が早くから導入されていました。人間の思惑で動かない機械のメンテナンスには、「芯出し」と「潤滑面の整備」が重要であり、軍艦ではそれが忠実に守られていることを改めて確認した一日でした。
[21世紀のメンテナンス:油の清浄度基準の再検討、その1]
前回のトライボトークでは、油のスラッジが摩擦を増大させることを実験データで説明しました。今回は日本で広く使われているNAS等級について、原典に立ち返って考えると同時に、モスクワで弾性流体潤滑の専門家から厳しい指摘を受けたことを紹介します。
[Camera]
昨年度は銀塩写真用カメラよりも、デジタルカメラの販売数が上回ったとの新聞記事を読みました。今回はカメラを取り上げてその語源から考えて見ます。第二次世界大戦勃発に関係した英国と日本の総理大臣にもつながってきます。
新年おめでとうございます。
本年もよろしくご指導・ご鞭撻お願い申し上げます。
本日はKLEENTEK 「トライボトーク」第11号をお届けします。
2003年は徳川家康が江戸に幕府を開いて400年、ペリーが黒船で来て開国を迫ってから150年目に当たる節目の年です。環境問題を考えると、昨年末にカナダが99番目の国として京都議定書を批准し、今春にはロシアが100番目の批准国になって「京都議定書締約国会議(MOP)」の設立総会が開かれるので、今年は本当の意味での「環境元年」になります。
京都議定書を批准した日本は、2008-2012年の間に温暖化ガス総排出量を1990年レベルよりも6%削減しなければならないが、2000年の日本の温暖化ガス総排出量は1990年レベルよりも8%も上回る13億3200万トンにもなっているという。
江戸時代の日本は世界で最も環境に優しいリサイクルの国だったと云われています。農業国だった日本は、人馬牛の排泄物を肥料にして生産した穀物や野菜は無駄なく食べ、残飯は草類とともに家畜の飼料にし、稲や麦の藁で道具を作り、屋根をふいた。穀物の殻、残った藁、森林を間引いた雑木を燃料として、今でいう再生可能なバイオマスを使い、灰は肥料にした。道具類は砥いだり目立てをして長く使った。保存食として寿司、干物、味噌、醤油、納豆、漬物を作り、ヌカミソも年代モノを重宝して、使い捨てという思想はなかった。その一方で、世界に類を見ない深みのある洗練された文化を作り上げた。鎖国によって閉じた系の中にありながら、全く無駄のないエントロピー最小の時代だった。この時代に戻るのは無理としても、使い捨てから脱却しなければ「環境時代」には対応できない。
[21世紀のメンテナンス:フラッシングをしない油交換は役に立たない理由:その3]
今回は、油の酸化変質物がトラブルを起こすメカニズムを知るために、新油、油に溶ける油の酸化変質物、油に溶けないスラッジを含む酸化油の摩擦係数を測定します。(本文の図3以下は、図の配置から2段組に変わっていますので、ご注意ください)。
[Knowledge(知識) と Wisdom(知恵)]
インターネットは知識の宝庫です。情報洪水の中から有用な情報を引き出すには知恵が必要です。今回はKnowledge(知識)と Wisdom(知恵)を考えてみました。
いつもお世話になっているクリーンテックの佐々木徹です。
出張から帰りましたので、今回の「トライボトーク」第9号は日本からお届けします。
今回カナダの Deer Lake の水力発電所を訪問したとき、現制御室は最新式のものでしたが、そこには1923年当時の制御室の写真が飾ってあり、珍しいので写真に撮らせてもらいましたので紹介します。 左の写真がそれで、まるで昔の船の操舵室のようでした。船では船長が伝声管を通して、「全速前進」と叫んで、スタンドの指示を「全速前進」にすると、下の機関部から「全速前進」の確認がもう一つのスタンドに表示されます。制御室の機器は新しくなっていましたが、水車、ガバナー、発電機などは昔のままでした。
[21世紀のメンテナンス:フラッシングをしない油交換は役に立たない理由:その1]
前回、極性物質と無極性物質は仲が悪いと述べましたが、どうして仲が悪いのか、今回はその理由を説明します。自然界で各物質は常にその自由エネルギーG が最も安定した状態になろうとします。熱力学では状態の安定はその状態のもつエネルギー(H)とエントロピー(S)の組み合わせから、G = H-TSで表される自由エネルギーGによって決まるといいます。しかし油は単一の分子ではなく、油の酸化変質物もわけのわからないものです。わけのわからないもののエネルギーを云々するのは無意味ですので、「論より証拠」簡単な実験で極性物質と無極性物質の仲の悪さを説明することにします。
[Deer Lake で考えるDeerと鹿の共通点]
シカゴのNew-found-landでの一歩は Deer Lake でした。鹿が水浴したかもしれない湖から水を引いて水力発電をしていました。発電所には1923年製の古い発電機4基がありました。今回はDeer について考えてみますが、Deerと日本語の「鹿」に共通点があります。
いつもお世話になっているクリーンテックの佐々木徹です。
本日はKLEENTEK 「トライボトーク」第8号をシンガポールからお届けします。
今回の出張では、ジャカルタ、シンガポール、ジョホール・バルを訪問しました。この後クアラ・ルンプールとバンコックを訪問しますが、日中の温度が30℃の暑い中、毎日3社を訪問しています。東南アジアも経済不況ですが、訪問先はこの不況の中でも成長しているところばかりでした。中国系シンガポール人のプラスチック射出成形会社は、冷却水のパイプをステンレスにしていました。前々回訪問したとき、このオーナーに弊社のアメリカのお客様が冷却水に純水を使い、配管をステンレス管にしていることを話したので、配管から実行して効果は抜群で、トラブルフリーでステンレス配管代はすぐに回収できたそうです。ここでも先見性のある会社は成長しています。同社は現在2台の静電浄油機を使っていて、来年稼動の新工場にも静電浄油機を採用してくれるそうです。
[21世紀のメンテナンス:油交換は役に立たない]
弊社のアメリカのセールスマネジャーは、メジャーオイル会社で16年間潤滑油を販売していました。彼はお客様に油交換を勧めていたことを今では後悔しています。油交換をするときには、フラッシングをしてから、友油でフラッシング油を洗い出し、その後で新油を入れる。この作業では「汚染油」「フラッシング油」「フラッシング油を洗い出す友油」の3種の油が廃油として出るので環境を無視した行為です。最近はフラッシングなしの更油が多い。その場合、どのようなことが起るのかを、今回は詳しく説明します。
[Terror とGuy Fawkes Day]
前号でNew-found-landでは森林保護のために屋外での焚き火は11月5日のGuy Fawkes Dayを除き禁じていると書きました。このGuy Fawkes は1605年の11月5日に旧教徒たちが英国議事堂を爆破してJames一世と議員たちを殺害しようとしたGunpowder Plotの首謀者で、今流でいうとテロリストです。英国からNew-found-landに逃れてきた旧教徒たちは11月5日を今でもGuy Fawkes Dayとして特別の日としています。
いつもお世話になっているクリーンテックの佐々木徹です。
本日はKLEENTEK 「トライボトーク」第7号をカナダのニュー・ファウンド・ランドからお届けします。
カナダに来る前、アメリカのミシガン州ランシングのミシガン州立大学で開かれた「South-East Michigan Sustainable Business Forum(南東ミシガン持続可能ビジネス・フォーラム)」で「環境を考えた21世紀のメンテナンス」について講演をしました。ここにはGM.フォードその他、デトロイトを地盤にしている企業や工場から環境担当者250人が出席していました。最近アメリカの企業はISO14000を取得する会社が増えていて、納入業者に「近い将来、ISO14000をとらないと取引ができなくなる」ことを予告しているところも出だしたという。アメリカのブッシュ大統領は京都会議の約束をホゴにして、米国として独自の環境保護案(これではCO2の排出量が15%増える)を出していますが、アメリカ企業は世界市場を目指しており、国内のエネルギー業者寄りの政府とは無関係に環境問題に取り組んでいます。訪問先の環境担当者は強い権限をもっていました。弊社は2社の環境コンサルタント会社と手を組んで仕事をすることにしました。
[21世紀のメンテナンス:環境のメンテナンス]
メンテナンスは機械に限っていません。環境のメンテナンスは地球規模のメンテナンスです。New-Found-land に来たカナダのChretien首相は11月4日に「20年もしないうちに、地球温暖化のためにアメリカの一部で穀物が出来なくなる」(The Western Star)と演説しています。デトロイトの会議でも同様のことが話されていました。今回は油管理で電力消費を大幅に減らすことができたことを報告します。
[Husbandはケチ?]
アメリカでも日本人に会うと、島津製作所の田中耕一さんの話が出ました。社員の中には島津製作所のことを「シマツ製作所」という人もいましたが、「シマツする」とは「無駄を惜しむ、節約する」という良い意味です。小柴先生も税金から出た研究費を使うときには「値切り倒した」と云っておられます。
いつもお世話になっているクリーンテックの佐々木徹です。
本日はKLEENTEK 「トライボトーク」第6号をお届けします。
10月9日から約2週間は日本の研究者がノーベル物理学賞とノーベル化学賞を受賞することが決まったとのニュースで日本中が湧きかえりました。中でも民間企業のサラリーマン研究者がノーベル化学賞を受賞することになったことは、日本の科学技術の底辺が大きいと言うことの証拠で、不況にあえぐ日本にとって、これほど勇気つけるニュースはありません。「トライボトーク1」に書いた「エンジニア」を田中さんは証明してくれました。
今回は科学とは縁遠いと思われているメンテナンスの科学について述べますが、私のメンテナンスへの関心に始まりは、私の大学の卒論「Middle Class In America」 (アメリカの中産階級) にあります。その副題は、「カルタゴは滅びたが、ギリシャはまだ生きている」でした。卒論研究の過程で、物質文明は「システムのメンテナンス」が出来なくなり、修復不可能になった結果として崩壊するという確信を得ました。
[21世紀のメンテナンス:メンテナンスを科学する]
機械装置でメカニカルな部分の故障の大部分は、機械の潤滑部に関係しています。機械の潤滑は潤滑油で行われていますが、使用機械の潤滑油中には汚染物がたくさんあります。この状態を「エントロピー」という概念で考えると、エントロピーが最大に向かって進行している状態です。新たなエネルギーを加えなければ「エントロピー」の増加を元に戻せないが、安いコストでエントロピーを減少させようというのが21世紀のメンテナンスです。
[サラリーマンはサラダ?]
島津製作所の田中耕一さんがノーベル化学賞を受けることが決まり、民間企業のサラリーマンに大きな衝撃と夢を与えました。入社20年経って、同期入社の人の中には部長も数人おられるのに、係長以下の主任だったことも大きな驚きですが、世間の雑音、サラリーやボーナスの多寡にも左右されず、純粋に研究に打ち込んでこられた田中さんには、新しい価値観と新鮮さを感じました。今回はサラリーの語源から日本社会のシステム疲労を考えます。
いつもお世話になっているクリーンテックの佐々木徹です。
本日はKLEENTEK 「トライボトーク」第5号をお届けします。
前回のトライボトークで書いたように、2002年に入ると利益の出ている会社でも、ROAは1-2%以下に落ち込んでいます。このような状況下で新たな設備投資はできないので、既存の機械設備を最大限に活用する以外に方法はありません。新聞などによると、日本の製造業の生産設備は20-25年以上のものが多く、中国の方が新鋭機械設備をどんどん導入しているという。これでは工業立国を国是とする日本の将来は暗いと云わざるをえません。20-25年も使ってくたびれている機械設備を活性化するには、メンテナンスしかないのです。これから私の持論であり、ヨーロッパで実践している「21世紀のメンテナンス」のプロローグです
[21世紀のメンテナンス:プロローグ]
「メンテナンス」というと、下等な仕事だと考える人が多いようです。確かに新しい機械を開発・設計・製造するには高度な知識が必要ですが、設計基準や何らかのお手本があります。しかし修理屋は今まで見たことのない古い機械や最新の機械でも、限られた時間内に損傷部を修理するだけでなく、設計に問題があった部分でも治して機械の性能を高めることまで行います。メンテナンスにはネガテイブな3K(きつい、汚い、危険)のイメージがありますが、ポジテイブな3K(几帳面、経験、機転)がなくては成り立たない仕事です。筆者は6年余り船の修理屋の見習いをしていましたが、その間に学んだことは、その後の三十数年間に学んだものに匹敵するものでした。製鉄会社の設備技術者は、年間の売上高に倍する金額の機械設備の面倒を看ている、非常に重要な仕事をしておられます。
[写真とノーベル賞]
たまたま「写真とノーベル賞」を書いておいたところ、東大の小柴昌俊名誉教授がノーベル物理学賞を、島津製作所の田中耕一氏がノーベル化学賞を受賞されることが決まりました。経済的に元気のない日本ですが、二人のノーベル賞受賞で、科学技術は世界に冠たる地位を占めていることが認められ、大変勇気つけられました。技術ニッポン・バンザイ!
いつもお世話になっているクリーンテックの佐々木徹です。
本日はKLEENTEK 「トライボトーク」第4号をお届けします。
9月17日に小泉首相は平壌で北朝鮮の金正日総書記と首脳会談を行い、共同宣言に調印したが、その中には拉致事件のことや、被拉致者12人中8人が死亡していることを書いていなかった。この新聞記事を読んで、私が昭和45年12月にアメリカで弁護士(ユダヤ人)とある契約の件で交渉し、煮え湯を飲まされたことを思い出しました。交渉が決裂しそうになったとき、彼は決裂を避けるためとして「数項の合意に達しない事項があったが、下記の事項(合意事項を列記)について合意した」と書いた書類を持ってきてサインを求めました。これは事実だから私は調印しました。ところがこれが彼の「手」でした。私は「交渉は妥結しておらず、当面の合意事項の確認」と考えていましたが、彼は合意事項の即時履行を要求してきました。今回の「日朝共同宣言」はこれと同じではないかと思いました。北朝鮮は国内的には拉致事件は伏せて、共同宣言だけを発表して、日本に経済協力を要求してくることにならなければよいがと心配しています。
[日本企業のROA]
トライボトーク3「経営者が重視している経営判断指標」の中でROAの重要性について書きました。今回は日本企業のROAがどのように変化しているのかを検証してみます。政府や経済学者は、「設備投資の回復」に期待するといっていますが、1971年には14%もあったROAが現在では2%台にまで低下していることを考えると、経営者は新しい設備投資に踏み切れないでしょう。日本再生の道は、既存の機械設備を廃棄して更新するのではなく、現有の機械設備をフルに使って仕事をして体力をつけることではないかと思います。
[Assetsは充分ですか?]
1990年の日本の国富は3522兆円だったが、1990年から98年末までに936兆円(第一生命研究所調査、日経2000年9月)、99年にも180兆円が失われ、2002年の株安で150兆円が失われたという。一方日本人は、毎年平均して75兆円づつ貯め続け、現在1400兆円の個人金融資産を持っているといわれています。今回は資産(assets)を考えて見ます。
いつもお世話になっているクリーンテックの佐々木徹です。
本日はKLEENTEK 「トライボトーク」第3号をお届けします。
日本人は1400兆円の個人資産を持っているそうです。このような巨額の個人資産が経済活動の中に還流されると経済活動は活発になりますが、経済活動に使われていないから、日本経済は不況から脱却できないのです。今回は投資資本がどれだけ合理的に活用されているのかを判断をする経営指標について説明します。
ご意見、ご感想、ご質問をsasaki@kleentek.co.jp または sales@kleentek.co.jpにおよせいただきましたら、メールで回答させていただきます。
「経営者が重視している経営判断指標」
企業の投資資金は元々株主から預かった資本ですので、株主は投資資金が有効に活用されているかどうかを絶えずチェックしています。個々の株主はチェックできないから、信用調査会社や機関投資家などの経済研究所、などが株主の代わりに調べています。企業経営者(取締役や監査役)は第三者機関に悪い評価をされないように、次のような経営指標を使って会社の経営状態を常にチェックしています。
ROA (Return on Assetsの略):資産がどれだけの利益を生んでいるかの目安
ROE (Return on Equityの略):株主資本がどれだけの利益を生んでいるかの目安
その他の指標。
今回はこれらの経営判断指標の中でROAとROEについて述べます。
「Equity の意味」
今回の「経営者が重視している経営判断指標」の中で、ROEについて述べましたが、ここではEquity という英語の本来の意味を歴史的に考えます。単に語源を調べただけでなく、シーザーの「ガリア戦記」、シェークスピアの「ジュリアス・シーザー」、フォーチュン最新号まで引用していますので、これをお読みいただくと、Equityが「会社の帳簿に記載されている株主の財産」という意味、それを不正利用して金儲けをした人のことまでわかります。
【はじめに】
今年は台風の当たり年ですし、8月に入って連日30℃を越える真夏日が続いています。この暑さは日本に限ったことではないようです。今年の6月18日に私はドイツのEmden からルクセンブルグに近い Trier市に向かう途中ケルン近くで、午後5時頃に41℃という猛暑を経験しました。W杯サッカーで日本がトルコに負け、韓国がイタリーに勝った日です。ドイツのラジオ放送によると、ドイツ観測史上最高の暑さだったそうですが、まさか真っ赤なT-シャツを着た韓国の応援の熱気が伝わったわけではないでしょう。信じない方も居られるでしょうから、下の証拠写真をご覧ください。カーナビ画面の下の左が外気温(41℃)で、右が室温(23℃)です。
[電力会社の巨額の設備投資と油管理の方法]
猛暑の中で快適に生活をするにはエアコンが不可欠ですが、エアコンは電気で動いています。電気消費のピーク時にも電力会社は電気を安定的に提供しなければならないので、巨額の設備資金を投じています。電気を作るタービンには潤滑油が使われています。回転を制御(調速)するために、制御油圧が使われています。機械トラブルは油槽中の油の清浄度と直接関係はなく、潤滑部の状態に直接影響されていることがわかりました。発電所の油管理について共通の問題を述べます。
[恥と恥ずかしい]
最近は政治家や企業の不正行為が増えています。不正行為は破廉恥行為です。昔の人は「恥」に対しては切腹で始末をつけました。今回は「恥」と「恥ずかしい」について書きます。
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KLEENTEK トライボトーク1 (2002/8/5)
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いつもお世話になっているクリーンテックの佐々木徹です。
本日はKLEENTEK トライボトーク創刊のご挨拶を申し上げます。
私が船の修理屋として機械トラブルのメカニズムを知りたいと考えてから35年、トライボロジーの勉強を始めて25年、工学博士になって10年経ちました。その間、不思議な機械トラブルの相談を受けたり、世界中のお客様からたくさんの質問をいただいたりしました。論文などに書けない問題もたくさんあります。それらのいくつかは、「トライボロジーにとりつかれた男の遊油ぶらぶらトーク」に書きましたが、その後もたくさんのことに出会いました。「これらの経験を持ったままで死んでしまったら、もったいない」と友人からのアドバイスを受けましたので、KLEENTEK トライボトークとして皆様にお伝えしたいと考えました。ご意見、ご感想、ご質問をsasaki@kleentek.co.jp または sales@kleentek.co.jp におよせいただきましたら、メールで回答させていただきます。
「機械設備への投資金額の大きさ」
日本の国内総生産(GDP)は約500兆円だと云われています。ところが、このGDPを生み出すために使っている機械設備や装置に投資された金額は1000兆円にも達しているのです。経済企画庁の統計資料を使って、これらを製造業の産出額や機械工業の売上高と較べて見ます。機械設備技術者の仕事の重要性を考え直してください。
[エンジニア]
私がお会いするお客様のほとんどはエンジニアです。エンジニアに技術説明をすると、真摯に耳を傾けていただく方と、「自分はエンジニアだから頑固だ」といって、自己主張をされる方がおられます。自己主張は非常に大事なことですし、自己主張をされる方は勉強しておられる方に多いから、決して自己主張を非難すべきではありません。このことをさて置き、今日は「エンジニア」の本当の意味を語源から考えてみます。