Technology

浄油技術

“浄油”とは

“浄油”とは油中のゴミ(以下コンタミ)を取り除いてきれいにすることですが、その「きれい」を判断するための規格もさまざまなものがあります。

よく使われる規格としてコンタミの大きさと数を計測して等級を割り当てるNAS1638(NAS等級)やISO4406(ISO等級)があります。
他の評価方法としては質量法というものがあります。これは大きさや数ではなく規定量あたりの流体に含まれるゴミの重さを“汚染度”として評価する方法です。

それぞれ一長一短がありますが、作動油を管理するうえでNASやISO等級には大きな落とし穴があります。
例えばNAS等級の場合、5μm以下のコンタミは計測・評価しないことです。
これは油中に5μm未満のコンタミが多量に混入していたとしても5μm以上のコンタミが少なければNAS等級上では清浄度が高い油として評価されてしまうのです。(ISO等級の最小評価域は4μm©以上)

油中には様々なコンタミが存在し、5μm以下のものも多く混在しています。
一例として下記のコンタミ分布を見てみましょう。

コンタミ分布

上記の表は、長期間使用した作動油中のコンタミをサイズと種類に分けて表したものになります。
作動油を長期間使用していくと、油中には5μm以下のコンタミも多く存在し、1μm以下の領域では油由来のコンタミ“酸化変質物”が主体となってきます。
この酸化変質物は油が酸素と結合し酸化物として油中に析出してきますが、非常に細かい粒子であるため、フィルター(濾過式)では捕捉が困難であり、また半固形物質であるためフィルターの目にかかっても油の流れにより流出してしまいます。つまりフィルターによる油管理では補足できるコンタミのサイズに限界が出来てしまうため、油中の酸化変質物が残存し時間とともにその濃度は高くなっていきます。
酸化変質物は金属面に付着しやすい性質があるためタンク壁面や配管内部等が酸化変質物で汚染されてしまいます。当然そのような環境下ではバルブなどの精密油圧部品は深刻な影響を受けます。

清浄度管理

省エネの流れを受けて油圧部品は小型化、高効率化が進み部品のクリアランスはますます狭くシビアな設計となりました。
それに伴い求められる油の清浄度も高くなりましたが実際にどのような清浄度管理が有効なのでしょうか。

上記はサーボバルブ内部のイメージ図ですが、スプールとスリーブのクリアランスはたった数ミクロンしかありません。この狭いクリアランスに侵入できるコンタミは酸化変質物が主体となってきます。
酸化変質物は極性があるため金属面に寄りやすく、さらに粘着性があるため一度まとわり付くと自然には剥離しません。
酸化変質物の膜はどんどん厚くなりやがては部品の動きを妨げるようになります。これが“バルブロック”が発生するメカニズムです。また摺動面の摩擦を増大させるため焼き付きの原因にもなります。

NASやISO等級では評価されない微細なコンタミが油圧トラブルの元凶となっているのがお分かりいただけたでしょうか。

長年培った分析力・技術力

酸化変質物の評価

では油中の酸化変質物をどのように評価したらよいでしょうか。
さまざまな評価方法がありますが、よく使われている方法の一つに質量法があります。
上記で記載したように規定量あたりの流体に含まれるゴミの重さを“汚染度”として評価する方法です。

具体的には、目的に合わせて孔径サイズ0.22μmや0.8μm等のメンブランフィルターに試料油(100ml)を通過させます。
通常はフィルター上の残渣物を計量して完了となりますが、クリーンテックでは残渣物の色相や、残渣の捕捉状態を質量と併せて評価します。この“残渣物の状態”の評価こそが長年培ったクリーンテックの分析の力、技術力です。

下記に粒子数計測と質量法による汚染度評価で結果が大きく異なる例を示します。
両サンプルはともに粒子数計測でNAS7等級の清浄度が高いと評価されるサンプルです。
実際はいかがでしょうか。濁度が大きく異なることが分かると思います。
NAS等級上では同じ清浄度ですが、質量法やメンブランフィルターでの評価では大きく異なり、同じ清浄度評価という言葉ですがそこには大きな差異があります。このように粒子数計測だけに頼った清浄度管理では大きな落し穴に陥ってしまいます。

粒子数計測は重要な評価方法の1つではありますが、それだけに囚われず質量法等の分析も交えて複合的に分析を行うことが望ましいと言えます。

弊社の熟練分析官が日々実験や研究、分析を行っています。

クリーンテックの静電浄油機

クリーンテックでは1961年に潤滑研究所としてスタートして以来、油中の酸化変質物を効果的に除去する方法について研究を重ねてきました。
結果、開発されたものが静電浄油機です。

静電浄油機はフィルター式浄油機とは全く異なる方法で油中のコンタミを除去します。

10,000V以上の高電圧を発生させることができるトランスを搭載し集塵体(コレクター)の電極板間に強力な静電気力(クーロン力)を発生させます。油中のコンタミがマイナスに帯電していればコレクターのプラス電極側に捕捉され、逆にプラスに帯電しているコンタミがあればマイナス電極側に捕捉されます。

全ての物質は電子を持っているため帯電しており、油中のコンタミの種類、サイズに関係なく捕捉可能となります。(水など電気を流しやすい物質以外)

静電浄油機による油管理では除去が難しい酸化変質物を除去することにより、油の清浄度を飛躍的に向上させます。
超清浄な状態を維持することは油圧機器の安定稼働を実現させるとともに、世界の共有資源である油の寿命を大きく伸ばし地球環境に大きく貢献することができます。

オイルクリーナーのパイオニア

クリーンテックは潤滑研究所の設立以来、分析件数は5万件を超え、その蓄積したデータ・知見を持つ技術者集団となりました。
浄油機の製造販売をするだけのメーカーではなく、浄油に関する確かな技術をもって適切なご提案が出来るメーカーとして活動を行っています。
潤滑油の浄油を通して油圧設備トラブル低減に貢献できるよう努めてまいります。